第15章 エンリ帝国  〜1節 7権分立〜

その国をまとめ上げる者の呼び名は国によって違い、幾つもある。
まずは王。
王がまとめ上げる国は、王国である。
王が存在せずに皆の中からリーダーを決める国は、共和国である。
そして、神のごとき宗教的価値観にて国の頂点に君臨する帝(みかど)の治める国は帝国である。
エンリ帝国も同様に、レインボーラインの海に浮かぶギルタ列島を治め、帝を頂点とする国であった。
だが、帝はあえて実権を握らず、実際に国を動かしている者が他にいる。
国民から選ばれた者、玉(ぎょく)である

 

エンリ帝国内の権力は7つに分かれている

・法律を作る『立法』
・作られた法律で裁定する『司法』
・法律に沿って国を動かす『行政』
・国民へ様々な情報を知らせる『報道』
・上記の権力に司る者を任命する『属託(そくたく)』
・全ての権力の根底にある『思慮(しりょ)』
・玉を選ぶ『玉選(ぎょくせん)』

この7つの権力の内、権力の根底にある『思慮(しりょ)』は帝が持ち、『無い権力』とも呼ばれる。
玉を選ぶ『玉選(ぎょくせん)』は18歳以上の現役層が持ち、
任命権を持つ『属託(そくたく)』を選ぶ権利は10歳から17歳までの修習層と労働を引退した退役層が持つ。
(何歳で引退するかは本人の自由)

思慮とは、生きとし生ける者全てに対する配慮の精神であり、
配慮無く施行された権力は無効となり施行者は解任され
『属託(そくたく)』によって再選出し、任命される。

エンリ帝国の公務はもちろんの事、国民の労働に仕事の引き継ぎという概念は無く
官職、役職を解かれた時点で即座に職場から退出せねばならない。
退出までも複数の監視と見送りが付く。
辞めていく者の思想や悪意の種を残さないため、各権力は常に一から築かれていく。
権力とはどうあるべきか、その理想を子供の頃から学び、自分の意思でどうあるべきかを選び、委ねる事ができる国。
ゆえに帝に権力は無く、無い権力に国民は支えられ、そこから選ばれた玉も権力を持たない。
持つのは、国民が自らの生活の維持と他者への支援に相応しい税額を自分で決めて玉にさし出した税金である。
その中から玉が各機関に給料として配慮を元に分配される。
全ての国民と公務に携わる者を見て配慮できる者が現役の代表として玉に選ばれ
国民はその玉の指示に従うのであった。
ゆえに玉は偉大であり、尊敬の敬意の対象として見られるのだ。

その玉が持つ権力がもう一つある。
それは艦隊の指揮権である。
造船技術を持った帝国、その玉が指揮するエンリ帝国艦隊は他国との交易や隣接するエア王国との国境を見張るのが主な任務であった。