第2章 エンリ帝国 〜3節 思兼(オモイカネ)〜

性別は3つ存在する。
強い力を持ち王座に君臨するタジカラヲ。
特殊な力を持ち、子を産み、育て、実働するクノイチ。
そして、その両方の体や心を兼ねるオモイカネ。

オモイカネが持つ力は、弱い力であった。
オモイカネは核の力も、炎や氷を支配する特殊な力も持たない。

エンリ帝国は核の力を持ってはいなかった。
なぜならばタジカラヲがいないからだ。

エンリ帝国では、九尾の狐の加護を受け、
タジカラヲは生まれずにクノイチとオモイカネしか生まれなかった。

タジカラヲと核の力は存在しないが
自国の穏やかな海域の外は嵐のため外海から侵略される事が無く
また他国は造船技術が無いために海に出られず、侵略の仕様がなかったのだ。

オモイカネとクノイチによる造船で繁栄した国、エンリ帝国だが、
諸島側と列島側では気候の差から、服装や船の形状に違いがあり船の形状は大きさが違った。
大陸と接する列島側ではエア王国を見張る巡視船と駆逐艦が必要であったため
数百人が乗り込む大船が作られた。

諸島側はその温暖な気候から魚介類が多く漁も盛んであるため風通しのよい船が好まれ、多くても10人程が乗り込む小船が多く作られた。
また、諸島側は列島側に比べて風が弱く、大船であると移動速度が遅くなる。
大陸と接する海域には草原の民ガル・バと、砂漠の民ムシュ・バがいる。
その部族は近海の魚の捕獲を、丸太を紐で繋げた筏(いかだ)でおこなうため魯(ろ)で進み移動に風は関係が無い。
大船では魯(ろ)で進む筏(いかだ)に追いつかれ乗り込まれてしまう事から、小船の集団で生活をしていた。

 

同じ帝国内とはいえ、文化の違いから衝突が起こる時がある。
列島側の文明の発展と共にその衝突が大きくなり、いつしか諸島部の小船集団は帝国法にも逆らった結果蛮族化し、海賊と呼ばれるようになった。

帝国と海賊の争いを哀しんだオモイカネは海域の中央にある満月島に映り住み、中立地を作った。
しかし、列島と諸島、ともにクノイチだけとなるといつかは滅びてしまうため、
子孫繁栄と衝突を避けるために、中立後、両部にはオモイカネが派遣された。

こうしてエンリ帝国は3つ別れ、次第に帝国と呼ばれる領土は列島部のみとなったのだ。