あの新月から1ヶ月後
運命に導かれた者達は再びネル・ガへとやってきた。
エンリ帝国艦隊と海賊イシュターの総指揮官 遊元帥となったチャラいカネは
すぐさまイシュターの戦士を呼び寄せ、エア王国側に艦隊を配置
あるべき位置にあるべき船、人材を適材適所に配置
演奏の得意なオモイカネの知恵を借り、
艦隊とイシュターに隊列(LINE)を組ます事で移動速度を飛躍的に上げてエア王国へと向かった。
「物語というものはキャスティングが良ければ最後まで上手くいくもんだ」
とチャラいカネは言った。
チャラいカネの予想通り、すでに何隻もの火力船が完成していた。
あの豪華客船は、火力船の製造を隠すためでもあったのだ。
帝国艦隊の老朽化した船をおとりに使い、火力船にぶつける事で足を止め、
そこにイシュターの小舟の集団が乗り込み、艦隊は援護射撃をおこなう事で制圧した。
常に多くの船を1隻の火力船に集中させる戦法を取る事で、一部のイシュターからは
「これではいじめではないのか?」
という不信感も出たが、チャラいカネはブレる事なく作戦を遂行した。
演奏の得意なオモイカネは言った。
「珍しいな、君がピンチを演出せずに常に全力で立ち向かうなんて」
チャラいカネは答えた。
「これは目的のはっきりした戦だ。
自分一人の問題じゃないし、職責を背負ってるからね。
何を犠牲にしてでも最後まで遂行するよ、その犠牲は、僕の信用でも構わない。
もうこれで恋愛ができなくなっても構わないのさ!」
「恋愛の信用は最初から無いと思うが」
と演奏の得意なオモイカネは突っ込んだ。
全ての火力船を潰し、イシュター達を上陸させる事で港と造船所を制圧し、海戦は勝利した。
そして油断する事なく監視を強化、さらに艦隊の一部を輸送船に使い、多くの物資を砂漠の民ムシュ・バへと送った。
「これで過激派による万が一の暴走を抑えられる、エア王国と組まれては勝ち目が無くなるからね」
と、自身が戻るまでの指示を出し、ネル・ガへと向かった。
毒王の剣も完成し、出発が間近に迫った時
義足のクノイチが現れた。
その隣には顔立ちの整ったクノイチがいた。
踊りの得意なオモイカネと涙ボクロの可愛らしいクノイチは、包帯を口に巻くそぶりを見せると、
顔立ちの整ったクノイチは微笑んだ。
その顔立ちの整ったクノイチは、未来からやってきたアプス山脈を監視するガーディアンであった。
ガーディアンのクノイチは未来の世界を伝えた後、眠るように息を引き取った。
「どうして・・・・・」と涙ぐむ義足のクノイチ。
ガーディアンは言った。
「過去から来た者は、過去から来た事を聞かれてはならない。
未来から来た者は、未来から来た事を言ってはならない。
それが定め・・・」
そして義足のクノイチに謝った。
「黙っていてすまない・・・あの時のお前を見て思ったのだ。
人の涙を止められないのは、見捨てたのと一緒だと・・・」
という言葉を残してゆっくりと眠りについた。
義足のクノイチは涙を拭いて前を見つめた。
覚悟を決めた者達は、冥府へと向かった。
冥府には様々な邪龍や亡者が行く手をふさいだが、
3人のオモイカネが隊列や結界を使い、指揮し、突破した。
そして不滅の怪物、ティンダロスの猟犬が現れた時
正十角形で作られる究極の結界(TERRITORY)
十角形 デカゴン ~アマテラス~
を作り出し、ティンダロスの猟犬の足を止めた。
仲間の支えを受けて、最深部の扉へと走る毒王。
扉の前には、顔に包帯を巻いた先代の毒王の姿があった。
10歳の頃、タジカラヲとされた裁判で処刑となった時にネル・ガへと引き取ってくれた毒王である。
かつての毒王は、今の毒王に伝えた。
「タジカラヲは九頭龍の化身、この世界が自然破壊や核で崩壊するのも、全て九頭龍の意思、
そして、それを阻止するのが九尾の狐の化身であるクノイチとオモイカネの意思」
そして、扉の鍵を渡した時
包帯を取り、素顔を見せた。
「私は・・・お前だ・・・
エア王国を止めた後、アプス山脈を抜けて過去へと向かい、
裁きの場でタジカラヲとされたオモイカネをネル・ガで引き取るのだ」
そう言って、未来から来た者がそれを口にした定めか、
それとも、この時まで永く生きた生命の終章だったのか、かつての毒王は眠りに付いた。
「冥福は祈らなくていい、使命を果たした者は冥府には行かない
皆、虹の橋を渡り、オーロラの階段を登って導かれていくのだ。」
という言葉を残して。
冥府から戻ってきた一同は、それぞれの使命をもとに、各地へと向かった。
エア王国を止めるために、砂漠の遺跡を守るために、この世界を守るために。
自分自身が自由であるために。
そして、かつてイシュターで生まれたオモイカネ
今はタジカラヲとなり、数多の朋友(とも)の支えにより毒王となった者は過去へと向かうためにアプス山脈を目指した。
これから始まるオモイカネの戦いを見守るために。
使命を果たすために、オモイカネはオモイカネの道を行く。
その軌跡は光の本となり、色褪せぬ記憶として煌めき続ける。
つじつま合わせの不器用な者達が綴る物語。
叙事詩オモイカネとして。
エンリ帝国戦記
~叙事詩オモイカネ~
完
作:輪島貴史
~後書き~
これ読んだあとに、私も多分オモイカネかも~、って思ったら
この作品書いてよかったッス