第7章 毒王の儀

ネル・ガに迷い込んだオモイカネを受け入れたのは、将来を約束した友であった。

ネル・ガのタジカラヲは族長となる試練を10歳から与えられる。
裁判によってネル・ガに引き取られたその友も例外ではない。

毒を支配するネル・ガのクノイチによってタジカラヲは皆、毒への耐性を付けられる。
時間をかけて様々な毒を受け続け、ほとんどのタジカラヲはその過程で死に至る。
猛毒の試練に生き残った者のみが長となれるのだ。

族長を決定する最終試練は24歳の時に行われる毒王の儀。
数々の毒を持った植物によって作られたイバラの道を潜り抜け、
最終地点にある冥府の入口にそびえる大樹にたどり着いた者が勝者となるレースが成人の儀式なのだ。

そのレースには各タジカラヲに一人のクノイチが補助として同行するのが習わしである。
タジカラヲはクノイチを指名できず、また、指名が重なる場合はそのクノイチ同士での戦いがレースの中で行われる。
つまり優秀なクノイチに選ばれたタジカラヲが勝者となれる仕組みであり、毒王の儀の最期は二人の結婚式でもあるのだ。

魔の森で再会したタジカラヲとオモイカネ。
かつてオモイカネであったタジカラヲにはネル・ガの入れ墨が彫られ、治癒による解毒は禁止とされていた。
破った場合は死罪である事が裁判で出された条件でもあった。
自らの力のみで毒を克服しなければならない。
その苦痛にゆがむ耐性の試練を15歳まで必死に耐え抜いてきたのだ。

かつてクノイチであったオモイカネはネル・ガとなり友のサポートを決意する。